イベントレポート

ついに開幕!この夏注目の「水の物語」。「水に浮くまち」で水面を歩いてみました!

高橋陽子

2019.08.03

Writing: 高橋陽子


この夏、注目の物語がついに開幕しました。
水の都・西条が舞台の第3話「水の物語」。
“水の都の夏まつり”と題し、夏休みにぴったりのプログラムを8月12日(月・祝)まで開催中です。

プログラムは、大きく2部構成。
美しく澄んだ水を視覚的に捉える「水に浮くまち」アートプロジェクトと、食のプロジェクト「うちぬき氷プロジェクト」。

開催に先立ち、「水に浮くまち」アートプロジェクトのプレス内覧会があったので、一足先に体験してきました。
その見どころを、作り手の思いと共にじっくりと紹介します。

 

会場に旧西条藩陣屋跡のお堀を選んだワケ


「絶対ここだと思った」

そう語るのは、えひめさんさん物語総合プロデューサーの澤田裕二さん。
今回の舞台を旧西条藩陣屋跡のお堀と、その周辺に選びました。旧西条藩陣屋跡は、西条藩主・一柳家の陣屋として1640年ごろに築かれたもので、現在も大手門、石垣、堀、北御門などが残ります。

「こんなにきれいなお堀は日本でも珍しい。石鎚山系も望めて、点の水ではなく、大きな水の流れ、循環を感じる。ところが、西条の人はこのお堀の水の素晴らしさを忘れているようだった。ここしかないと思った」

そう考えた澤田プロデューサーが「この魅力を引き出せる人は?」と自問して抜擢した人物こそ、今回のアーティスト、美術家の木村崇人さんでした。

▲美術家・木村崇人さん

木村さんはこれまで越後妻有アートトリエンナーレ、瀬戸内国際芸術祭、あいちトリエンナーレなど、さまざまな芸術祭に参加。「地球と遊ぶ」をコンセプトに、体験型の作品を数多く生み出してきた腕利きのアーティストです。

「おかげで散々悩みました(笑)。だけど悩むことが楽しかった。この経験は、僕にとって初めて、というより『貴重』でした」

(木村崇人さんのインタビュー記事もどうぞ)
「水と向き合い、純粋な気持ちで、いい作品を作りたい」。『水に浮くまち』のアーティストが語る制作背景と挑戦。

 

西条の印象から誕生したタイトル「水に浮くまち」

「市内の川の中にいる魚を見ていると、その水の透明度から魚の下に影ができ、まるで魚が空中に浮いているようでした。いたるところにある『うちぬき』の存在は、まるでまちの地下が水で満たされ浮いているという印象でした。どちらにも共通する『浮かぶ』というキーワードからつけたのが、今回のタイトルです」

こうして、「水に浮くまち」アートプロジェクトと名付けた今回。
木村さんは、「いかに水を遊ぶか」を悩み抜き、お堀の水面下にステージを設置。鏡のように大空が映し出された水面を素足で歩ける「水空を歩く」を考案しました。


水面では、今回のために谷川俊太郎さんが特別に書き下ろした詩を楽しむことも。

さらには、谷川さんの詩の朗読音声を聞きながら、その水空を観覧できる小屋「光の劇場」も設けました。
「水空を歩く」と「光の劇場」。
その作品ごとのポイントを紹介していきます。

 

「水空を歩く」


プレス内覧会には、お堀のほとりの栄光幼稚園の子どもたちが招待されていました。普段は見るだけのお堀で、裸足になってゆっくり水の中へと進んで行く園児たち。

「冷たくて気持ちいいー」
「わ!足に魚!」

引率の先生からは「子どもたちにとって忘れられない体験です」と喜びの声。

私も裸足になって歩いてみましたが、一歩踏み出すごとに感じる水の冷たさ、波紋の面白さ…。大人こそ、はしゃいでしまう、うれしい体験でした。

「歩くと何が起こるのか、ぜひ楽しんでください。光によって、水面が鏡のようになり、大空を歩いているような感覚も楽しめると思います。水面にちりばめた谷川さんの詩『水の変幻』と合わせて、身体、心、視覚を通して、普段は見過ごしてしまうこの場の豊かさを感じてもらえれば」

「光の劇場」

水空を歩くが、動のアートだとすれば、光の劇場は、静のアート。
私はそんな印象を受けました。

水空を歩くステージに向かって建てられた古屋。
そこでお堀を鑑賞するというのが「光の劇場」です。
「光の劇場」には、仕切られた部屋が5部屋。部屋の中に入ると、スッと涼しさを感じ、さっきまでのセミの声やうだる暑さは、いつの間にか忘れていました。

真っ黒な床、壁、そして屋根。
屋根はあえてこの高さ。屋根に映る水面のきらめきがとてもきれいでした。

「1部屋への入室人数は6人に限定しているんです。この場に集中してもらう環境づくりのために。暑い中、じっとお堀の水を見てくださいといっても見られないと思うんです。まずは、この場に集中してもらうこと。そして、普段とは違った視点を持って、心で感じてもらえるように」

そう話す木村さん。なるほど、広すぎず、狭すぎず、「茶室」のように落ち着きを感じる空間でした。


心穏やかに水面に視線を注いでいると、5分後には、谷川さん本人の音声による詩の朗読が流れます。
さらに5分後には、「水空を歩く」の参加者が水面を歩きはじめます。
水空を歩く参加者の演出により、また違った風景を楽しむ仕掛けなのです。

「水の豊かな表情を観察し、心で水と遊んでもらいたいと思っています。20分という限られた時間ですが、きっとどれだけいても飽きないはずです。貴重な時間になるでしょうし、なんというか『生きていてよかった』と感じられると思うんです」

 

この夏、水の都・西条でしか刻めない記憶を


▲美術家・木村崇人さん(左)と澤田裕二プロデューサー(右)

プレス内覧会の結び、木村さんとの対談で、澤田プロデューサーはこう話しました。

「木村さんが『生きていてよかった』と表現していましたが、まさにそう。“ここに生きてよかった”だし、“私でよかった”だと思う。地域に当たり前にあるものが、資産なのです。それをアーティストとのコラボレーションにより、新しいかたちとして引き出そうとしたのが本プロジェクト。

アートは美術館で見るアートと、場所自体がアートになるものがある。
このプロジェクトは後者。この場所があって、はじめてできる。他に持っていけないし、この地域の人とだからできる。その場でつくられるもの、その瞬間しかないものを共有し、心の中に記憶することが大事。

いいものができると、“長く開催してください”とか“残してください”という声が必ず出るんです。でもそれでは意味がない。今だから意味がある」

 

木村さんが「いかに水を遊ぶか」を考え、水と向き合いつくりあげた「水に浮くまち」アートプロジェクト。
水の都・西条で、この夏だけの記憶を刻みに、ぜひ遊びに来てくださいね!

最後に、木村さんのメッセージです。

「“遊ぶ”というのは、物事の本質を捉えるのに、一番ストレートな手段だと思っています。日本人はどこかに答えを求めたがります。でも僕はあえて何もないものをつくりました。それぞれが、自分に入ってくる何かを感じてもらえればうれしいです」

 

<今回の取材先>
水の物語「水に浮くまち」アートプロジェクト
日時:8月3日(土)~12日(月・祝)
水空を歩く/1日:全16回 10:10~17:55(毎時10分・40分スタート)
光の劇場/1日:全16回 10:00~17:50(毎時00分・30分スタート)
※どちらも10時以降の回は9時~、14時以降の回は13時~整理券配布予定
※3日・10日は水空を歩く16:10、光の劇場16:00で終了
場所:西条市 旧西条藩陣屋跡のお掘周辺(西条市明屋敷234)
参加料:入場無料

\特別イベントも開催/
・8月3日(土)「水に浮く合唱団
西条市立西条北中学校の合唱団が水上でアカペラを披露!
・8月10日(土)「水上ライブ
インストゥルメンタル・デュオによる水の上の演奏会。
・8月11日(日)「ランタン・フローティング
ワークショップ参加者の皆さんと作った灯篭を夜のお堀に浮かべ、神秘的な一夜を演出!

◯関連イベント
水の物語「うちぬき氷プロジェクト
高校生&店舗コラボオリジナルかき氷コンテスト
うちぬきの水アイスカービングショー
みずのマルシェ ほか
日時:8月10日(土)・11(日)
場所:西条市 旧西条藩陣屋跡のお掘周辺(西条市明屋敷234)
参加料:入場無料
参加予約:不要
アーティスト:フードプロデューサー 中村新