イベントレポート

「水と向き合い、純粋な気持ちで、いい作品を作りたい」。『水に浮くまち』のアーティストが語る制作背景と挑戦。

串部公基

2019.07.06

Writing: 串部公基


▲水に浮くまちイメージ(©木村崇人)

えひめさんさん物語の中核をなす、6つのコアプログラム。
「水の都・西条」の新しい魅力を作り出し、広く発信するのが「水の物語 水の都の夏まつり」です。
物語の中では、美しく澄んだ水を視覚的に捉える「水に浮くまち」アートプロジェクトが8月3日(土)~12日(月・祝)に開催されます。

今回は、「水に浮くまち」をプロデュースする、アーティスト木村崇人さんに話を伺いました。


▲アーティスト 木村崇人
愛知県生まれ。東京藝術大学大学院博士過程修了。Ecole Superieure d’Art et de Design de Reims(フランス)卒業。「地球と遊ぶ」をテーマにした作品制作や国内外でのワークショップを多数。地球で起こる自然現象を世界の共通言語として捉え、見えないエネルギーを視覚化し体験することで、誰もが知っている知識として「知っている」と思っていることと実際のズレに気づかせる作品を展開している。「越後妻有アートトリエンナーレ」、「瀬戸内国際芸術祭」、「あいちトリエンナーレ」などの大型美術展への参加他、個展、グループ展、多数。

 

Q)四国・愛媛県との接点があれば、教えてください。
A)愛媛県に来たのは初めてです。他の3県は訪れたことがあります。今年の「瀬戸内国際芸術祭」(香川県)では、女木島で『カモメの駐車場』を展示しています。四国は、関東とは違って、どこにも海と山と川があり、光が違っているように感じました。


▲作品例「カモメの駐車場」(©木村崇人)

Q)西条市の印象と、現地に来ての違いはありましたか。
A)アトリエがある山梨で、高い山なら富士山で見慣れているつもりだったのですが、石鎚山を見て(西日本一とは聞いていたのですが)、その高さというか急峻(きゅうしゅん)さにはびっくりしました。海から山への距離が近くて、まちがぎゅっと挟まれている印象を受けました。そういった風土だからか、まちも人もたっぷりと自然の恵みを受けていますね。山の幸、海の幸がたくさんあって、うらやましいです。

Q3)西条市の「うちぬき」は日本一になった水です。飲んでみての感想はいかがでしょうか。
A)普段から南アルプスの水を飲んでいます。西条に来て最初に、加茂川にある嘉母(かも)神社の水を飲みました。全国利き水大会で一番おいしい水とも言われた「神の水」と呼ばれる名水だと伺いました。後味が印象的ですね。なんとも言えない甘みがあり、口どけというか、口あたりがやわらかい感じがしました。
それと、弘法大師の伝説が残る「弘法水」も訪れました。どちらも、大げさに飾ることもなく、大仰にPRすることもなく、風景や日常生活に溶け込んでいて、西条市は「豊かなまち」だと感じました。

Q)今回のプロジェクトの場所を、旧西条藩陣屋跡のお堀周辺に選んだ理由を教えてください。
A)この場所は、地元をよく知るプロデューサーから提案を受けました。制作にあたっては見慣れている場所でも、私(木村崇人)という外からの視点を入れることでプラスアルファのものを見せたい、いつも見ている風景から新たな発見や気づきを得てほしいと考えていました。地元の方にとっては当たり前の場所を探していたんです。お堀はまちの中心にあり、多くの人が集まり、うちぬきが自噴する場所も多く、石鎚連峰も見え、ロケーションとしては最高の場所だと思います。


▲作品例「雲になる日」(©木村崇人)


▲作品例「森ラジオステーション×森遊会」(©木村崇人)

Q)「水に浮くまち」という、アプローチに至った経緯を教えてください。
A)水がおいしいところは日本全国たくさんあります。でも、西条市に来て驚いたのは水の「透明度」です。本当に空気と同じくらいの透明度なんです。水のアートということで、水の質感をどう引き出すか、ということが逆に課題でした。市内を回っていると、たくさん川が流れていて、のぞき込むと藻がゆらゆらと揺れて、光を反射し川底に向かって揺れる影が見えました。小さな魚も泳いでいて、その影も川底にあり、まるで浮かんでいるように見えたんです。
西条市は豊富な地下水が自噴する「うちぬき」がいたるところにあります(自噴箇所は約3000)。それはつまり地下水の上に立つ、水に支えられているまちなんですね。別の言い方をすれば、水に浮かぶということです。
川底に「浮かぶ」ように見える藻や魚の影、地下水に支えられて「浮かぶ」西条というまち、どちらもキーワードは「浮かぶ」というところから、テーマが決まりました。そこから、水をどう扱うのか、水から浮いたまちを表現するには、どうすればいいのだろう? と。水に包まれ、水の恵みを受けたまちとして、水を楽しみ、水から浮かんだ状態で、水をフィルターとしてまちを見よう、と作品の制作を始めました。

Q)本番に向けて実験を繰り返していると聞きました。感触はいかがでしょうか。
A)先日、水面をいかに歩くかの実験をしました。実験をしていると、足元にはキラキラとした水面、見上げると青い空、まちのざわめきも聞こえて、本当にいい場所だなと再確認しました。市民の方にとってのお堀は、普段は見るだけですが、今回のプロジェクトでは水を飲んだり、手で触ったり、普段体験できないことをします。
噴水も止めます。波がなくなるのですが、波のない水面はかえっていろいろな表情をします。魚が浮かび上がってパクパクしたり、気泡がポツポツと出てきたり、風が少し吹くと波ができますし、そうしたことで水面に小さな波紋ができて常に表情が変わります。太陽の光が反射したキラキラと輝く様子もまったく同じものにはなりません。そうした変わりゆく水面を見続けると、時間を忘れるようでした。

Q)今回のプロジェクトのために、新しく挑戦した技術はありますか。
A)全てですね。先ほどの自分が感じた経験を、同じように感じてもらうため、水面ギリギリに小屋を建てます。皆さんが見ているつもりで、見過ごしているもの、感じないものを体験できるよう小屋を設計。映画館のスクリーンさながらに風景が切り取られ、光・時間・水を楽しめます。


▲水に浮くまちイメージ(©木村崇人)

また、水面を「素足」で歩いてもらいます。そのとき、水の温度や質感を感じるでしょう。視覚情報や言葉より、人間は身体で何倍も感じることができます。足裏だけでなく全身をつかえば、もっと多くのことを感じるはずです。谷川俊太郎さんが、今回の作品のために、特別に書き下ろした詩もあります。
詩を視覚で感じ、水を足裏からの触覚で感じ、さらに風や空気を全身で感じます。そうして、水を媒体に、自分の内面が反応し、地球や宇宙のことまで意識が向くかもしれません。そこから、西条市のこと、恵まれている生活環境、私たち人間の立ち位置、そうしたことに気付き、見直せるか、ということを考えていただきたいです。

私自身も、新しい風景が見えてくるのか、誤摩化すことのない気持ちが湧き上ってくるのか、水と向き合い、純粋な気持ちでいい作品を作りたいと思っています。そして会場となる西条市を楽しめるかということも含め、全てが私の挑戦です。

Q)メッセージをお願いします。
A)水がふんだんにあり、自然豊かな西条市ですが、私の作品に触れて、作品や町、周りの人々と時間を共有し、もっともっと西条市を知ってほしいですね。そして、こんなに、おもしろく楽しいまちだということを気づいてほしいです。そういう作品を目指して日々試行錯誤しています。西条市の方も、市外の方も期待してください。

木村さん、ありがとうございました。

【今回の取材先】
水の物語「水に浮くまち」アートプロジェクト
日時:8月3日(土)~12日(月・祝)
水空を歩く/1日:全16回 10:10~17:55(毎時10分・40分スタート)
光の劇場/1日:全16回 10:00~17:50(毎時00分・30分スタート)
※どちらも10時以降の回は9時~、14時以降の回は13時~整理券配布予定
※3日・10日は水空を歩く16:10、光の劇場16:00で終了

場所:西条市 旧西条藩陣屋跡のお掘周辺(西条市明屋敷234)
参加料:入場無料

\特別イベントも開催/
・8月3日(土)「水に浮く合唱団
西条市立西条北中学校の合唱団が水上でアカペラを披露!

・8月10日(土)「水上ライブ
インストゥルメンタル・デュオによる水の上の演奏会。

・8月11日(日)「ランタン・フローティング
ワークショップ参加者の皆さんと作った灯篭を夜のお堀に浮かべ、神秘的な一夜を演出!
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