イベントレポート

紙で遊んで、学んで、魅せられて。地域とアートがつながった「紙のサーカス」が圧巻だった!

高田ともみ

2019.12.07

Writing: 高田ともみ


半年にわたる東予東部圏域振興イベントのフィナーレを飾った舞台、「紙のサーカス」

初日の11月22日、取材をかねて娘と参加してきたのですが、終わってしまうのが寂しい…そんな思いに駆られたのは初めてです。夢のように過ぎ去った「紙のサーカス」の一部始終、冷めやらぬ興奮とともにレポートします!

私たちがいたのは、紙のサーカス団への入団テスト会場だった!?


少し出遅れて会場のしこちゅ〜ホール(四国中央市)に到着した私たちでしたが(といっても30分前)、エントランスはすでに行列ができていました。

なんてったって、『にほんごであそぼ』でもおなじみの、ひびのこづえさん演出による舞台。待ちに待った当日を迎え、来館者もなんだかそわそわしていて、まだ何も始まっていないステージを眺めているだけでドキドキしてきます。一体どんな世界が繰り広げられるんだろう……?

そうこうしているうちに、開演です!

“やまじ風”が吹き始めました。やまじ風とは、四国中央市一帯にふき下ろす南からの強い風のこと。地域ネタをもりこみつつ、演じるのも地元の子どもたち。かわいらしいダンスで観客をひきつけます。

次にパフォーマー「ホワイトアスパラガス」のお二人が登場。軽快なトークで、初日の会場をあっという間に盛り上げていきます。

「今から、紙のサーカス団の入団試験を行う!」
MCを兼ねるおふたりがそう言うと、会場がどっとわきました。そうです。私たちは今日、紙のサーカス団入団希望者としてここにいるのです! 知らなかった~(笑)。


受付時に手渡されていた紙袋を開けると、中には紙のお面が。「お面をデザインせよ!」との指令で、ペンで好きなようにカスタマイズして装着完了!
ここまで来ると、入団への熱意もだんだん高まってきます(笑)

ちぎって、まるめて。大人も子どもも紙に包まれおおはしゃぎ!


そこから怒涛のように行われた“入団テスト”の数々は、どれもこれも楽しくて、大人も子どももずっと笑いっぱなしでした。行われたのはこの3つ。

1)トイレットペーパーリレー!
2)紙の大玉パスリレー!
3)巨大ティッシュペーパーをちぎって玉入れ!

今振り返ってみても、これ、四国中央市じゃなかったら実現するのはすごく難しかっただろうなと思います。サイズも量も桁はずれに違うものを用意して、それを惜しげもなく使わせてもらえるなんて、紙のまち、四国中央市の底力たるやすごい。


入団テスト1! トイレットペーパーのロールを、最後尾から最前列まで運ぶリレー!みんなで協力してひっぱっていくけど、これがなかなか終わらない。トイレットペーパーってこんなに長いんだという気づきも。


入団テスト2! お次は、さっきのトイレットペーパーをまるめて作った大玉を、ぽーんぽーんと後方パス! MCの「おっことぬし様のようだ!」のひとことがものすごいツボに(笑)。


入団テスト3! 合図とともに上空から落ちてきたのは、巨大すぎるティッシュペーパー! これには会場が騒然。光に照らされなんとも幻想的……ですがこれティッシュです。


司令塔からの「やぶって丸めてー!」のかけ声が飛ぶと、一斉に破かれ、小さなティッシュボールが山のように。そして、通路に待機するエリートサーカス団員(地元の高校生たちが大活躍!)が持つ箱めがけての玉入れがスタートしたのでした。


なんという、めくるめく時間。傍らにいたはずのうちの娘は、次から次へとやってくるお題に真剣。だんだん“取材するなら一人でやんな”という感じに仕上がっていき、お友達とワーキャーしつづけていました。

圧巻のパフォーマンスで会場がひとつに。クラゲたちが織りなす「海のものがたり


息つく暇もなく終えた第1部。10分間の休憩をはさんで始まった第2部は、それまでとはうってかわって、まるで別世界でした。
だって、気がつくと、私たちは海の底にいたのですから。もう、そうとしか言いようがない。私たちはきっと、やまじ風に吹かれて、瀬戸内の沖合にきてしまったのだと、その優美なダンスが始まったとき、思いました。



風船と紙につつまれたクラゲは、ライトに照らされ、ほのかに浮かび上がります。なんだか本当に生きているみたい……。観客が持つ小さな灯りとともに、舞台全体が生命力をみなぎらせていきます。


“息を飲む”というのはこういう時間のことをいうのでしょうか。
ダンサー引間文佳さんによるしなやかな体の動き。ジャグリングやダンスで本領発揮のホワイトアスパラガスのお二人。作曲家川瀬浩介さんの心地よい音楽に乗せて、ひびのさんのコスチュームがまるで生きているみたいに揺れています。


パフォーマンスの随所で、地元の子どもたちが大事な役どころを担い、なにもかもが完璧に調和していく……。いつのまにか、あれだけ騒がしかった会場がしずまり返り、子どもたちも一緒に海のものがたりに飲み込まれていったのでした。

アーティストひびのこづえさんと、クラゲになりたい子どもたち


がっつり参加型の第1部から、鑑賞型の第2部へ。緩急のついた舞台構成と圧倒的なパフォーマンス。もう、うまく言葉では説明ができません。

なんかものすごいものを体験してしまった……軽い衝撃のまま、後ろ髪ひかれる思いでホールを出たところで、二度目の衝撃。目の前にいるのは、談笑するひびのこづえさんご本人ではありませんか!
思わずかけ寄り、感動と興奮を勢いのまま伝えます。そしてここぞとばかりに「写真撮影、お願いできませんか」とたずねると、「いいですよ」と優しい笑顔。
い、いいんですかー!? 自分でお願いしておきながら動揺し、慣れないカメラをかちゃかちゃ準備している間に、ひびのさんが娘に話かけてくださっている。

ひ「どうだった?」
娘「すごくおもしろかったです」
ひ「どのへんで見られたの」
娘「1階の前のほう」
ひ「そう、じゃあよく見えたね。よかったね」

この写真を撮らせてもらったとき、私は、ひびのさんはきっと子どもが好きなのだな、と思いました。それだけで、なんだかすごく幸せな気持ちになりました。


さて、大仕事を終えた気持ちでエントランスへ向かうと、ひびのさんによるインスタレーション「紙のまち」と遭遇です。

展示が始まった初日に訪れ、すでに鑑賞済みだったのですが、そのときとは全く違ったものに見えるのが不思議です(「紙のまち」のレポートはこちら)。“すごーい”で終わっていたまちが、一気に立体化して、膨らんでいくみたい……と、再び感動に浸っていたら、子どもたちはこの美しい作品の前でクラゲのマネして遊んでいた(笑)。


こらこらやめなさいってば(笑)。でも、あんな世界を見せられたら、そりゃクラゲになりたいよね。あんなふうに泳ぎまわってみたい、そんな純粋な衝動こそアートの源泉。もしかしたら、子どもこそ、本当の意味でアーティストなのかもしれない。


ひびのさんはきっと、そんな子どもの気持ちがわかっている人なんだって思いました。だから、これほど多くの人たちを、世代を超えて感動させることができる。深いところにある、人のみずみずしい感覚をずっと追い続けている人なんだな、と。

まだまだ言葉になりません。でも、誰ひとり受け身になることなく、地域も人も巻き込んだ時間は、圧倒的にアートで、とても美しい時間でした。

「紙のサーカス」がみんなの心の中に残したものが、この町の次の物語にきっとつながっていきますように。私もできることならまた参加したい。今度は取材なしで!!!

【今回の取材先】
「紙のサーカス」
日時:11月22日(金)18:30〜
11月23日(土・祝)14:30~、18:30~
場所:しこちゅ~ホール(四国中央市妻鳥町1830-1)