イベントレポート

「えひめさんさん物語」はこれからどうなる?その答えは閉会イベントにあった!

高橋陽子

2019.12.27

Writing: 高橋陽子


四国中央、新居浜、西条の3市を舞台に、2019年4月20日に開幕した東予東部圏域振興イベント「えひめさんさん物語」。
約7カ月間で、全6話のコアプログラムと100のチャレンジプログラムを展開。
そして2019年11月24日、物語はついにフィナーレを迎えました。

フィナーレを迎えた、ということは、物語はこれでおしまいなのでしょうか?
いつかの過去の物語になるのでしょうか?

その答えを求めるように、「閉会イベント」を取材しました。

 

「誇郷」を見つめてはじまる


会場は、四国中央市のしこちゅ〜ホール。前日まで開催されていた「紙のサーカス」の熱気がそのままに、客席はすでに多くの人で埋まっていました。

開演のブザー鳴り、さあ閉会イベントの始まりです。

オープニングを飾ったのは、地元・三島高校と川之江高校書道部の合同チームによる書道パフォーマンス。軽快な音楽に合わせた躍動感あふれる筆遣い、光の演出も加わった見事な舞台芸術に、観客は一気に引き込まれていきます。

大きな紙に力強く書かれたのは、「誇郷」の題字。

「ふるさとを盛り上げていこうと、2つの高校であえて題字を分けて書きました」「誇りという字を「こ」と読んで、「誇郷(こきょう)と書きました。3市がもっと盛り上がるように」

パフォーマンスを終え、そう語った両部長。その言葉は「新しい魅力と誇りをつくり、多くの人が憧れ訪れる圏域にすること」を目指してはじまったえひめさんさん物語の意味を、私たちに確認させてくれました。

▲水の物語「水上ライブ」の様子

続くステージでは、物語を振り返る特別映像が上映され、観客は思い思いにこれまでの日々を振り返りました。


映像が終わると、ステージに総合プロデューサーの澤田裕二さんが登場。
「今のお気持ちは?」と司会者に問われ、「ほっとしているのと、これからだなという気持ちです。今日までの全てはプレイベント。今日が最も大事で、明日からが本番です」と観客に語りかけるように答えました。

 

この地で紡がれるドラマが魅力の「チャレンジプログラム」


イベントは、お待ちかねの成果発表とパネルディスカッションへ。
第1部のチャレンジプログラムの発表に先立ち、コーディネーター役を務める澤田プロデューサーが、さんさん物語の開催趣旨やチャレンジプログラムの概要を紹介しました。

チャレンジプログラムのねらいは、持続的なコンテンツを創出すること。実施主体は、市民団体や企業で、継続と発展が認定条件でした。最終的に認定を受けたプログラム数は、なんと100! つまり、100のプログラムが今後も続きます。

そのうちの3団体が順に成果を発表。コメンテーターを務める、四国中央市の篠原実市長、新居浜市の石川勝行市長、西条市の玉井敏久市長と意見を交換しました。


「ずっと取り組みたかった検定を、さんさん物語を機にできてよかった。高齢の伝統工芸士が元気になりました」と報告したのは、「水引結び技能検定&水引世界選手権」を開催した伊予水引金封協同組合の石川達也理事長。

「技能だけではなく、グッドデザイン大会もいいのでは?」「2020年のドバイ万博へおしかけて、水引世界選手権inドバイもあり!」などの意見が交わされました。水引の広がりに期待が膨らみます。


サンセット・ナイトクルージング&スペシャルディナー」を実施した新居浜マリーナサービスの安富貴志さんは、「新居浜にこんなマリーナやロケーションがあることを知らなかったと言ってもらいました。お客様の声を聞いて今後もサービス向上に努めたいです」と報告。自身もクルージングを体験したという石川市長は早速、「できれば船で料理を楽しみたい」とリクエストしていました。


愛車のE-Bike(電動アシスト付のスポーツバイク)で登場して観客をわかせたのは、「最上の秘境 西条プレミアムサイクリングツアー」を実施したB-shop OCHIの越智健二社長。

「Eバイクのおかげで西条の秘境を楽しめる距離が増えました」と手応えを報告した一方で、料金設定の課題を相談。澤田プロデューサーは「新しいツールが新しい価値を生み出します。発展性を考え、安くしないほうがいいです」とアドバイスしました。


意見交換を終え、市長は「3市の特徴が現れたいいイベントでした(篠原市長)」「住民が主体になって盛り上げていこうという機運が醸成されました(石川市長)」「プロや市民のおかげで新たな発見がありました。多くの人に来てもらえる、何より市民に楽しんでもらえるまちになってきました(玉井市長)」と評価。

澤田プロデューサーは、「今はスマホで情報を見る時代。一方でデジタルは人間にとってストレス。チャレンジプログラムに大きなことは必要ありません。たとえば、水引検定でおばあちゃんに『あんた上手いね』と言われるだけで心にしみる。どんな人や文化に出会い、どんなドラマを紡ぐかが大事。たくさんのドラマを紡いでほしい」と総括しました。

 

人、風土、ものづくりに新しい風を吹き込んだ「コアプログラム」

テーマはコアプログラムへと移り、セッションは第2部へ。

3市の共通テーマ「ものづくり物語」「子どもの物語」「山の物語」と、3市の個性や資源が題材のエリアテーマ「水の物語(西条)」「あかがね物語(新居浜)」「紙の物語(四国中央市)」の全6話で構成されていたコアプログラム。

今回は共通テーマイベントをディスカッションしました。


「ものづくり物語」の発表に登壇したのは、「アーティストinファクトリー」と「オープンファクトリー」に参加した大石工作所の大石憲一社長(イベントレポートはこちら)。アートプロデューサーの松田朋春さんもコーディネーター役に加わり、工場のまちを市民に開いた半年間を振り返りました。

大石社長:鉄鋼が80社ある新居浜市で、自社のアピールがしにくい状況でした。今回のプログラムを通じて「大石工作所はこう」と打ち出せて、リクルートにも効果がありました。

松田プロデューサー:愛媛が発展する上で大事なことですね。地元の学生が県外へ出て行くのはもったいない。「お父さんはこんな仕事をしているんだ」と子どもたちが喜ぶ姿は、この物語の核心をついていました。

大石社長:自主的にPR映像を制作した社員もいますし、「オープンファクトリーは12月以降も続けよう」と社員は皆前向きです。

松田プロデューサー:ものづくりはもともと創造的ですからね。アーティストとの関わりで、社員の方の想像力が湧き出したのでしょう。僕たちアートプロデューサーやアーティストとの関わりを超えるおもしろさがありました。


「子どもの物語」では、子どもたちだけで働いたり遊んだりする「小さなさんさん都」の運営に携わった4人の高校生、伊藤和さん(西条高校)、長谷川大朗さん(新居浜商業高校)、藤枝玲さん(三島高校)、三好芳征さん(西条高校)が登壇しました。

小さなさんさん都は、子育てしやすいまちにするためのプログラム。キッザニアと違い、「どんなまちにしたいか」を高校生が考えるところからスタートし、120人が運営に携わり、小学3〜6年生200人に企画を提供しました。(イベントレポートはこちら

4人は「自分たちのまちを考える機会になり、自分自身も楽しめました」「普段は接することが少ない他校の高校生や小学生と交流できて新鮮でした」などと笑顔で報告。

最後は、澤田プロデューサーの「来年はどうかな? 会場の大人たちに向かって、せーの!」のナイスアシストを受け(!?)、声をそろえて「来年もやりたーい!!!!」と大声で宣言。観客から大きな拍手が送られていました。


石鎚山を舞台にした「山の物語」のディスカッションには2名が登壇。

森高リゾートの森高大輔社長は、森林公園ゆらぎの森でトータル10のDIYイベントを開催
アウトドアに関するウェブサイト「Akimama」を運営するヨンロクニの滝沢守生さんは、関東から寝台特急で移動して山の物語を体験取材するなど、8本の特集記事を掲載しました。

森高さん:別子山の竹で、参加者が食器を作って食べたり、椅子をDIYしてその椅子で天体観測をしたり。大勢の人に楽しんでもらい、自分たちが住む地域に対し外からの意見をもらえてよかったです。

滝沢さん:どうやってAkimamaが「石鎚山」で検索1位を獲るかの切り口で記事を書いていました。

澤田プロデューサー:情報発信の仕方を工夫すると、四国のアウトドアも伸びますか?

滝沢さん:アジアがアウトドアカルチャーに関心をもってきました。安全に楽しんでもらうには、情報発信に加え、山道整備、他言語での道標設置が急務。山道整備はどこも及び腰なのですが「石鎚山は私たちの資源」と認識できている3市は、ニュージーランドのような先進事例になる可能性があります。

澤田プロデューサー:この地はものづくりの地域ですからね。なんでもつくれちゃう。街と山が近いのも魅力。この地の新しい産業の活用としてアウトドアはありですね。

次から次へと、アウトドアと産業の可能性を熱心にディスカッションする3人。
きっとそれほどに、この地の資産は素晴らしく、可能性は無限にあり、新しい価値をつくりだす挑戦が鍵となる、のかもしれません。


▲最優秀賞を受賞した加川 泰志さん(左から2番目)

山の物語「石鎚山脈フォトコンテスト」の表彰式も行われ、最優秀賞の加川 泰志さん(広島県広島市)に表彰状が手渡されました(入賞作品など結果はこちら)。

審査員を務めた澤田・松田両プロデューサーは、「石鎚山に雲を突き破るエネルギーや太古の歴史を感じた」「こんなに表情が豊かな写真はない。文句なし」と絶賛。

加川さんは「石鎚山には30回以上登ったが、奇跡の1枚でした」と笑顔で語りました。

 

心が動いて、人が動いた。希望が見えたイベントだった


全体総括として、澤田プロデューサーはこう語りました。

「すごく変わった県民性だと思いました。仕事があって経済が豊かで、『こんなもんだろ』と日常に満足しているところが。だから驚かせがいがありました。皆さん、想像できなかったと思います。煙突がしゃべるとかね。人間は理屈では動かない。心が動いて初めて動く。技術や情報は日々変化します。創造力と柔軟な発想が大事なんです。前のめりに、でも倒れない程度に、頑張っていただきたい」

閉会イベントの結びとして、中村時広知事と3市長が「東予アクティブライフ創造宣言」に署名し、これからも地域一丸で魅力を発信することを誓いました。


壇上で、宣言書を持って笑顔を見せる知事や市長、ガッツポーツを見せる実行者の皆さんを見て、私はなんだかとても誇らしく思いました。これまで見てきたさんさん物語を回想し、今後に希望を見たようで、すがすがしくもありました。

参加者の皆さんはどうだろう……? 帰り際にインタビューしてみました。

「こんなにもたくさんのイベントが実施されていたとは知らず、驚きました。今日も何度も発言に出ていましたが、継続が大事。今日の閉会イベントを見て、継続できそうでホッとしました。自分の子どもの世代が地域の魅力に気づいて、地域を活性化させてほしい。希望が見えたイベントでした」(男性・西条市)


▲子どもの物語の発表者・西条高校3年 伊藤和(のどか)さん、母・祐子さん親子

「次回は中学生が主体となるイベントがつくれたら面白いと思います。小さなさんさん都の本当の目的は、出て行く人が地元に戻ること。イベントを通じて地元の良さを子どもたちに伝えられたと思います。全員にか? と言われるとわからないけれど、少なくとも私は地元に戻りたいです」(和さん)

「イベント準備中、娘はとても楽しそうでした。新居浜や四国中央市のことなど、普段は話題にあがらないようなことが会話にでていたので、地元だけでなく他市町に目を向けるきっかけにもなりました」(母・祐子さん)

つくる人にも、見る人にも、参加する人にも、たくさんの出会いやドラマを生んだ、えひめえひめさんさん物語。読む人(さんマガ読者の皆さん)にも、そうであったらうれしいです。

物語にシナリオはありません。終わりもありません。
これから一体、どんな物語が紡がれていくのか。
物語の続きを、楽しみましょう。
あなたも、みんなで。

【今回の取材先】
えひめさんさん物語閉会イベント
日時:11月24日(日)13:30~16:00
場所:しこちゅ~ホール 大ホール