イベントレポート

アートに染まった工場を巡って来ました!

高橋陽子

2019.05.12

Writing: 高橋陽子

こんにちは。さんマガ編集長の高橋です。
ついに開幕した「えひめさんさん物語」。そのこけら落としとなる「第1話 ものづくり物語」が、「工場」を舞台にさまざまなプログラムを開催中です。

私も5月4日に新居浜で開催された「アーティストinファクトリー」と「工場のおしばい」に参加してきました! その様子を2回に分けて、 当日の写真も、作品誕生の背景にあるビハインドストーリーも、たっぷりとお届けします。

それでは早速、「アーティストinファクトリー」編からどうぞ。

 

子どもたちの笑い声であふれた「Oishi Park【Land of Dreams】」

この日、アーティストinファクトリーが行われた企業は3社。ちなみに、アーティストinファクトリーとは「普段は見ることができない12のものづくり工場にアーティストが滞在し、工場の新たな価値を発見する作品を生むプロジェクト」です。

最初に訪れたのは「大石工作所」。普段は各種プラントの製造を行っている工場に彫刻家の柳原絵夢さんが滞在し、普段使用している材料や廃材を利用して、工場を「テーマパーク」のような空間に変身させました。
その名も「Oishi ParkーLand of Dreamsー」。

朝一番で訪れると、家族連れが続々と集まっていました。それもそのはず、10時スタートのファクトリーツアーは、2班編成になるほどの盛況ぶり。

私もファクトリーツアーに同行……の前に、大石憲一社長と柳原さんにインタビューさせていただきました。


▲大石工作所の大石憲一社長(写真左)と彫刻家の柳原絵夢さん(写真右)。スッと肩を組む仲良しぶり。

まずは、大石社長にアーティストinファクトリーに参加した理由を伺いました。

「直感で『楽しそう!』と思ったからです。弊社は昨年で創業80周年。弊社がどんなことをしているか知ってもらいたい、地域への恩返しをしたい、という思いもありました。絵夢さんとは同年代。金属で創作活動をされているとのことで、すぐに意気投合しました」

その言葉に続き絵夢さんは「デスクやロッカーまで提供いただいて、まるで社員のように接してくださって。居心地よく制作活動ができました」とにっこり。今回の作品に込めた想いをこう語ります。

「廃材を使って、この場が生きるもの、この場に来た人が楽しめるものをと考えました。大石工作所らしく『プラント』をイメージしたテーマパークにしています。工場内に子どもたちの笑い声が溢れたら成功ですね」


いよいよファクトリーツアーへ。
参加者たちは、工場内に作られたさまざまなブースを巡りながら、仕組みを聞いたり、実際に遊んだり。

こちらは、「石鹸水で溶接不良箇所を見つける」普段の工場の作業を生かした遊び場。普段の作業では絶対に不良品を出さないようにしているので、あえて泡が出る不良品をつくるのに苦労したとか。

こちらは、金属片でオリジナルのキーホルダーをつくるワークショップ。子どもにも大人にも大人気でした。

「子どもが喜ぶかなと思って」と松山市から親子4人で参加していた中鶴邦尚さん、綾さん、温人くん、彩智ちゃん。温人くんは「ピタゴラスイッチが好きなので、ボールが転がるのが面白かった」とうれしそうに話してくれました。

工場内は、子どもたちの笑い声でいっぱいでした。
大成功ですね! 大石社長、柳原さん!

 

計り知れない価値を生んだ、まぼろしの「海の街」

次に向かったのは、ステンレス板金加工に特化した「大伸ステンレス」です。
ここでもファクトリーツアーに同行。「海」に見立てた工場内に入る前に、参加者に懐中電灯が配られ、美術家の牛島光太郎さんから作品への思いが伝えられました。

「床や目の高さにも作品があります。社員の皆さんは、工場の(海の)近くに住んでいるとのことだったので、一人一人に海にまつわる話を聞きました。思い出、記憶、経験…海との関係は独特で、楽しい話ばかりではないかもしれないけれど、それが『新居浜らしさ』だと思ったから。懐中電灯で照らして、影絵の美しさを見ながら楽しんでください。日常的にここで営まれている仕事も想像してみてくださいね」

重い扉を開けて一歩中に入ると、真っ暗な異空間。微かに光がきらめきます。

「あった!」「こっちこっち!」
子どもたちが楽しそうに懐中電灯で照らしながら、ステンレスのオブジェを探し、影絵を見て大興奮。

「最初から夜の海にするつもりでした。工場なので、明かり取りの穴がたくさん。それを暗転させることも大変でした」と牛島さん。

「社員の皆さんがいかに自分ごととして今回のプロジェクトに取り組めるかを考えたんです。それで全員にインタビューして、オブジェを作りました。例えば、サメの中に子どもが泳いでいるオブジェは、『子どものころ、海で泳いでいてエイが来て、その口がサメに見えてもう死んだと思った』というエピソードから生まれています」

▲エピソード自体も文字をステンレスで立体化して作品に。

工場内を進むと、奥から大きな機械音が。そこには、レーンにつるされた巨大な船!

「こんな大きな製品をつくったのは初めて。鉄鋼の仕事をしていて、まさか船をつくるなんて。ワクワクしました」と話すのは社員の岩田誉さん。

酒井志津香社長は「社員のモチベーションをあげることが課題でした。弊社は普段、図面をもらって仕事をするのですが、今回はゼロから設計して、組み上げて……話し合いなくしてはできない作業でした。仕事にはならないけれど、計り知れない価値を生みました。今までにない達成感があります。今朝のミーティングでは、思わず涙声になるほどでしたから」と話します。

酒井社長は続けて、「こんなにたくさんのお客様にお越しいただきうれしいです。子どもたちが来て、『将来こんなものをつくりたい』と言ってくれたり、社員の家族が来て、『お父さんは普段こういうものをつくっているんだ』と言ってくれたりすると、社員も喜ぶと思うんです。家族や地域の人が、私たちの応援団になってくれたような思いです」とも。

▲美術家の牛島光太郎さん(写真左)と大伸ステンレスの酒井志津香社長(写真右)

この作品の展示は、残念ながらこの日限り。
さまざまな思いの詰まった、まぼろしの美しい「海の街」でした。

 

彩の中に、地域発展のための命の覚悟も表現した「タイムマンプ」

最後に向かったのは「別子飴本舗」。
到着してすぐ、店舗横の通路を床から天井まで覆う、カラフルなトンネルが視界に飛び込んできました。

美術家の松岡美江さんが、別子飴に使われている7色の包装紙で制作した作品「タイムマンプ」です。(マンプとは坑道を意味する間符から転じたもの)

この作品をじっくり鑑賞したいところ……ではありますが、まずはファクトリーツアーへ。

専用の帽子を着用して入った工場内では、別子飴にまつわるクイズを楽しんだり、別子飴づくりを体験したり。

その後、工場の外に出てタイムマンプへ。

このタイムマンプで表現したのは、明治元年に創業し、令和元年まで150年余の歴史をもつ別子飴本舗。
「トンネルを風が抜けるとき、包装紙がなびく美しさ、触れ合う音の心地よさを感じてみてください」と呼びかる松岡さん。

あらためて、この作品で表現した思いを伺いました。

「作品に新居浜の地域性を取り込みたい、別子飴とリンクさせたいと思いました。そこで注目したのが包装紙でした。包装紙には、太鼓台や石鎚山など、地域の特色がデザインされています。この包装紙が地域を背負い、別子飴を全国に運んでいるんだと感じたんです」

使用した包装紙の量は、なんと別子飴8万3000個分!
全てをつなぎ合わせると53キロ。うち5キロ分は縫ってギャザーに。

トンネルの手前(明治)から出口(令和)にかけてつり下げる包装紙を短くして、別子飴が上へ上へ上がっていく様を表現しています。

▲別子飴本舗の越智秀司社長(写真左)と美術家の松岡美江さん(写真右)

「私のこの白装束のような服にも意味があって。かつて別子銅山で鉱夫の装束は、鋪着 ( しきぎ ) という作業着だったそう。 坑道内の事故で亡くなったとき、すぐに白装束になれるからだと。別子銅山あってこその地域の発展。発展のために奮闘した、先人の命の覚悟も表現したいと思いました」

そんな別子銅山の坑道へのオマージュでもあった今回の展示。

越智秀司社長は「包装紙が生きた作品で、想像以上でした。これを機に、多くの人に別子飴やこの地域を知ってもらえたら。ここは工業のまちだから、えひめさんさん物語がこの『ものづくり』にスポットをあててくれたことをうれしく思います。これからですね」と、今後の盛り上がりに期待します。

タイムマンプは、5月18日まで展示しています。

 

工場にもアーティストにも、新たな価値や景色を生んだ「アーティストinファクトリー」。次回は5月18日(西条と新居浜)、最終回です。
ぜひ遊びにきてくださいね!

レポートの続き、「工場のおしばい」編はこちら

 

<今回の取材先>

ものづくり物語「アーティストinファクトリー」

株式会社 大石工作所×彫刻家・柳原 絵夢
有限会社大伸ステンレス×牛島 光太郎
株式会社別子飴本舗×松岡 美江

5月18日は5社(西条4社と新居浜1社)で開催!
お見逃しなく!
▶︎「アーティストinファクトリー

18日の参加企業、西機電装(株)/(株)西岡鉄工所×美術家・土谷享さんの制作風景に迫ったこちらの記事もどうぞ。

「アーティストinファクトリー」絶賛製作中。 うち1社の制作風景とつくり手の思いを特別公開!」

 

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