街コラム

西条まつり前にチェックしたい!まつりに欠かせない「提灯」づくりに込める、職人の想い。

高橋陽子

2019.10.06

Writing: 高橋陽子


「正月には帰れなくても、西条祭りには絶対帰る」

そんな声もめずらしくないほど、西条の人の心に根付く「西条まつり」が、いよいよ10月12日から始まります。

西条まつりは、4つの神社(伊曽乃神社、嘉母神社、石岡神社、飯積神社)で行われるお祭りの総称で、奉納される屋台(だんじり、みこし、太鼓台)の数はなんと、150台!
日本一ともいわれています。

西条の人ならずとも、毎年多くの観光客が訪れる西条まつりですから、さんマガ読者の皆さんの中にも、今から心躍らせている人も多いかもしれませんね!

今回は、そんな西条まつりに欠かせない、「提灯(ちょうちん)」づくりのお話をお届けします。

 

家族経営を続けて96年。「岡本提灯店」を訪ねて

江戸時代から続く「西条まつり」とともに受け継がれてきた提灯。だんじりなどの夜間運行時には、1台に100個近くの提灯が灯され、その様子はまさに豪華絢爛です。

そんな西条まつりの提灯制作を担う市内3軒の工房のうち、今回は氷見にある老舗「岡本提灯店」にお邪魔しました。

昔から家族経営を続け、今年で創業96年目を迎える岡本提灯店。
毎年、1000個近くの提灯を手作りしていて、西条のだんじり、みこし用のほか、四国中央の太鼓台や香川からの注文も請け負っています。

工房に入ってすぐのお部屋で出迎えてくれたのは、岡本ムネ子さん。
なんと齢81の現役提灯職人さんです!
58歳の定年後から、今は亡き夫やお姑さんに倣い、提灯づくりをされているそう。

3代目店主を務めるのは、ムネ子さんの息子・哲典さん(59歳)です。

「地元の氷見地区のだんじりはほぼ全て、うちの(提灯)をつけて練り歩きます。祭り前に『提灯づくりは今が最盛期』とニュースが流れることもありますが、うちはわりと年中忙しいです。お祭りが終わってすぐに修理の注文が入ったり、年明けに依頼が入ったり、お盆前に注文が入ったりして、ちょうどよく注文が分散しています」と、哲典さん。

 

親族で工程を分担。先代手作りの道具が作業を支える

提灯づくりは、ムネ子さんを主力に、親戚一同で作業分担しています。
お邪魔した日は、哲典さんの妻・かおりさん、叔母の一色陽子さん、いとこの工藤好子さんがいらっしゃいました。

それぞれの工程を見学させていただきましたので、ご紹介しますね。

1)型組み

まずは、ムネ子さんが、木製の型を組んで、提灯の形の土台を作ります。

2)骨掛け

木型に刻んである溝に沿って、和紙を巻いたワイヤーをらせん状に巻いていきます。

ちなみに、提灯づくりに使う道具のほとんどは、先代の手作りなのだそう。
「巻き始めは手元に置いて、途中まで巻いたら、(先代手作りの)台にお世話になるんです。そしたら楽なんよ」とムネ子さん。

続けてムネ子さんが「この回転台(写真左手前)も、椅子を改造して作っとんですよ」と教えてくれると、横で聞いていた哲典さんは「これ、よう見たら、僕が昔勉強していた青い丸椅子やなあ」と苦笑い。

3)糸掛け

縦にまっすぐ糸をかけてワイヤーを固定します。かぎ針のような道具も、先代の手作り。
ここまで、ムネ子さんの担当です。

4)紙張り


はけでのりをつけて和紙を張っていきます。

「張るときよりも、切るときのほうが難しいんです」と話すのは、ベテランの陽子さん。
使用するのりは自家製。「先代がつくりよったとおりにしよるだけなんですよ。寒の間につくっておきます」とムネ子さん。

5)文字・模様入れ

のりが乾いたら木型を外して、墨などで文字や絵を描きます。
技術のいる筆作業。担当するのは、哲典さんの妻・かおりさん。
「緊張もしますけど、習字のように一筆書きというわけではないですし、慣れてきました」と、利き手でない手にも筆を持ち替えつつ、器用に文字を入れていきます。

6)筋つけ

張ったばかりの提灯は、折り目がないため畳めません。1本1本折り目をつけていきます。この辺り以降の工程は皆さんで。

7)油引き

えごま油をはけで塗ります。提灯は雨に弱いため油を引くことで、防水効果がでます。

8)乾燥

油引きした提灯を、天日で自然乾燥させます。

どの工程も手が抜けません。そして皆さんの思いは一つ。
「出来上がりを喜んでいただけるように」と、慎重に手をかけていきます。

 

提灯を作って「はい」と渡すだけで終わりではない


▲静かに作業をするムネ子さんと好子さん。好子さんはほとんどの工程を担当できる万能選手

ムネ子さんは話します。

「提灯づくりをしよったら楽しい。みんながうらやましがってくれるんですよ。『あなたは(いくつになっても)仕事があっていいね』って。そのとおり。ありがたいです。これからも、提灯を取りに来てくれたときのお客様の笑顔を喜びに、きれいな提灯を作り続けんと」

「あと、お祭り当日はね、氷見中のだんじり70台が全部ここへ来てくれるんです。1台1台がここへ停まって、差し上げ(だんじりを肩で持ち上げること)をしてくれて。ほんでお花(お酒)をあげるんです。昔からのしきたりでね。提灯を作って『はい』と渡すだけで終わりじゃない。だんじりに提灯をつけて、皆さんが楽しそうにかいてくれるんを見るんが、何よりの幸せです」

 

お祭りの日は、岡本提灯店の皆さんにとっても晴れ舞台。
まつりを楽しむ人たちと同じように、自分たちが丹精込めてつくった提灯がゆらぐ姿に、心踊らせています。

【今回の取材先】
岡本提灯店
住所:西条市 氷見丙625番地
電話:0897-57-9222

 

【2019西条まつり情報】
嘉母神社祭礼:10月12・13日
石岡神社祭礼:10月14・15日
伊曾乃神社祭礼:10月15・16日
飯積神社祭礼:10月16・17日