街コラム

創業240年超。「柴田モナカ本舗」が積み重ねる、責任と挑戦と“あん”へのこだわり。

高橋陽子

2019.04.04

Writing: 高橋陽子

“柴田のモナカ”。

「大好きなお菓子です」
「モナカと言えば柴田でしょ」
「食べたことはないけど、その名前知ってる」

愛媛の人に聞けば、こんな答えが返ってきそうです。

今回訪ねたのは、そんな「柴田のモナカ」で知られる、創業240年超の老舗「白賁堂 柴田モナカ本舗」。
代表銘菓「柴田のモナカ」へのこだわりと世代を超えて愛されている理由を探ります。

 

古くは土佐藩の御用菓子司を務めた由緒ある人気店

柴田モナカ本舗があるのは、四国中央市・川之江地区。JR川之江駅から徒歩5分。
栄町商店街のなかでひときわ風格漂うお店が、柴田モナカ本舗です。

歴史はとても古く、初代柴田辨治氏がこの川之江の地に菓子司「柴田」を創業したのは、なんと1772年。ピンときませんが、時代でいえば江戸時代。

土佐藩の山内公が参勤交代で江戸に登る際、川之江の宿場で柴田のモナカを召し上がり、そのご縁から、お店は土佐藩の御用菓子司を務めていたそう。


▲大正末期、新町本店の店頭風景


▲昭和初期ごろ、移転した栄町での店頭風景

 

そんな歴史ある柴田モナカ本舗の9代目にあたるのが柴田浩之さんです。
あらためて、代表銘菓「柴田のモナカ」のこだわりを伺いました。

「なんと言っても“あんこ”ですね。他のモナカとは全く違うと思います。通常、モナカに使用されるのは、あんこの中でも粘り気が強くて非常に甘いあんこ。色も味も濃いのですが、弊社のあんこは、透明感のある薄紫色をしています」

そう、柴田のモナカが人々を虜にして止まない最大の理由は、この「あん」にあります。

 

口どけのよい皮に、藤色の「あん」。多くのファンを持つ「モナカ」


▲「モナカ」1個180円(税込)

透明感のある藤色の「あん」は、よくある普通の「あん」とは異なる美しさ。味はといえば「甘さひかえめですっきり」。そんな上品なおいしさに、「このモナカなら何個でも食べられる」「やっぱりここのでないと」と、魅了される人、続出なのです。

そんなモナカは、自らおやつに食べるのはもちろん、来客の際のお茶請けとしても、手土産としても、多くの地元民に選ばれています。製造となれば1日2000個、帰省客が増える年末年始などは、1日8000個も製造しているそう。取材中も次から次へとお客さんが入店していました。

「購入者のほとんどは、昔からこの味を知ってくださっているお客様。ご自宅用に、ご贈答用にとお選びいただけるのは、本当にうれしいこと。そういうお菓子であり続けたいと思っています」

▲柴田のモナカは、第25回全国菓子大博覧会で名誉総裁賞を受賞したほか、受賞歴多数。店内には多くの賞状が並びます。

歴史ある技術や伝統を、代々の店主がさらに高めながら次の代へと継承するのは、並大抵のことではありません。浩之さんの背景にはどのような苦労や思いがあるのでしょうか。

 

サラリーマンから一転、老舗和菓子店主へ

「もともとは、弟が家業を継ぐ予定でした」と話す浩之さん。
中学から地元を離れて、その後ずっと東京で過ごしました。大学卒業後は、大手食品会社のサラリーマンとして働いていましたが、やがて転機が訪れます。

「当時の社長だった祖父と、母が相次いで亡くなったのを機にずっと混乱した時期が続き、店の将来が不透明になっていたとき、僕に『あんた、継いでくれん?』という声があって。2005年、35歳のときに、勤めていた会社を辞め、地元に戻りました」

大企業のサラリーマンから一転、地方の老舗和菓子店の店主へ。
待ち受けていたのは、老舗だからこその苦労でした。

「サラリーマン時代は大きな会社だったので、何事にも、『手本』がありました。会社の方針の元に目標は数値化され、仕事は具体化され、指示を仰ぐ上司がいます。仕事のスキルを上げたければ、書店に行けばハウツー本もある。自分が前進するための、指針になるものがあるんです。でも、ここにはありません。マーケティングという概念がない時代から長く続いてきた老舗がどう歩むべきかは、どこを探しても、正解は示されていないので、自分で考え、判断するしかない。そんな悩ましさはあります」

都会から帰ってきた浩之さんにとっては、地方ならではの人間関係になじめるかも、不安のひとつでした。でもすぐに、川之江という土地柄が生む気質を強みに感じられたといいます。

「四国中央市は、高知や香川にも接している土地柄か、愛媛であって愛媛でないという側面があると思うんです。コスモポリタン的というのでしょうか。どこかに属すとか頼るという意識が低く、広い視野を持ち、しっかりとした独立心を持っているような気がするんです。そうした気質は、自分にも通じるところがあると思っています」

 

守っていくもの。時代に合わせて変えていくもの。

家業を継いで14年。自らも、店の命ともいうべき、あんこ炊きを担当しています。

「家業を継ぐことを決めてからは、サラリーマンをしながら休暇ごとに帰省して、先輩に付いて学びました。35歳にして、ゼロからのスタート。今は、僕よりも10数年経験の長い、先輩と二人であんこ炊き担当です」

あんこ炊きは、力を必要とします。砂糖も小豆も、扱うのは30キロ袋が基本。
ときに火傷も伴う、危険な仕事でもあります。そして何より、火の入れ具合や煮炊きの時間など、製あん職人としての確かな技術が求められる仕事。

もちろん小豆にもこだわります。モナカの「あん」に散らす大納言小豆は、一番おいしいやわらかさに炊き上げるため、職人が一粒ずつ手選りで選別してから使用。一昼夜浸け込む仕込みを考えると、4・5日を要してようやくできる味なのです。

「守っていくべきものと、時代に合わせて変えていくべきものがあると思うんです。例えば、あんこの色、あと味すっきりとした甘さや製法。これらはずっと変えることはありません。規模を大きくする気もありません。設備も変える必要が出てきますし、品質を変えてしまう恐れがありますから。この作り方を、今後も守っていきたいと思っています」

一方で、時代に合わせて変えたものも。

「大きく変えたのは衛生面。この数十年で業界に求められる衛生基準が劇的に変化した中、従業員の意識面を中心に、かなり強化したつもりです」

商品開発の面では、和菓子離れが進む時代に合わせ、和洋折衷へ挑戦。浩之さんは、中でも思い入れが深いという「ちよこまん」の話を聞かせてくれました。

 

祖母への感謝を込めて開発した「ちよこまん」


▲「ちよこまん」1個170円(税込)

「チョコまん」ではなく、「ちよこまん」。その最大の特徴は、これはあんこ? それともチョコ? と迷ってしまう独特の食感の、チョコレートのあん。

「『ちよこまん』は、祖母の柴田千代子(ちよこ)の名前からとっています。家族にとっても会社にとってもいろいろと大変なことが続いた中、どんなときも温かく支えてくれていたのが、祖母でした。私が家業を継ぐと決めたときも“祖母のために”という思いが強かったです。また、祖母は、とても気前のいい人でもありました。そんな祖母への感謝の思いを込めて開発したのがこのお菓子なんです。『ちよこ』の名前をつけるからには、気前よくたっぷりチョコレートを入れなければ!と思い、日本一と自分で自信が持てるくらい、たっぷりとチョコを練り込んだつもりです」

そんなお話を伺ってからいただく「ちよこまん」は、よりいっそう優しい甘さを感じさせてくれました。

 

これまでもこれからも「あんこ屋」で在り続けるために

「和洋折衷と言っていますが、基本的にはうちはあんこ屋だと自負しています。これからもさまざまな挑戦はしていきますが、一番大事なのはモナカのあんこであり、おまんじゅうのあんこである、というところはブレてはいけないと思っています。変化すべきところは勇気をもって挑戦し、守るべきものは守っていく、ある意味頑固なあんこ屋で在り続けます」

そう力強く語ってくださった浩之さん。
伝統への責任と時代への挑戦、そして「あん」へのこだわりを積み重ねる柴田モナカ本舗。これが世代を超えて愛され続ける理由なのかもしれません。


▲明るく親しみやすいスタッフさんと浩之さんと。心温まる接客もすてきなお店です。

 

【今回の取材先】

白賁堂 柴田モナカ本舗(有限会社 柴田辨治商店)
場所:四国中央市川之江町1794-1
電話:0896-56-2232
営業時間:8時〜20時
定休日:元旦
駐車場:市営無料駐車場有
販売場所:伊予鉄高島屋、松山三越、イオン川之江店、フジグラン川之江店ほか、ホームページからもお取り寄せができます。
HP:https://shibata-monaka.jp/

 

◆関連記事
地元に寄り添う「白石菓子舗」の 変わらないおいしさ、変わるおいしさ。
四国中央市川之江地区のモナカの食べ比べはいかがですか?
違いを知るからこそ、よりいっそう、各々のモナカの良さが感じられるはずです。

 

チャレンジプログラム「しこく紙市場

今回ご紹介した四国中央市で「しこく紙市場」を開催!珍しい紙の購入、手漉き和紙、水引体験のほか、四国のおいしいものも味わえます。

日時:4月20日(土)・21日(日)・27日(土)・28日(日)
場所:新宮少年自然の家
駐車場:有り(100台)
参加予約:無し
お問い合わせ:まなべ商店 0896-77-4422