イベントレポート

新居浜太鼓祭り「上部地区山根グラウンド統一寄せ」を、世界へ。

高田ともみ

2019.10.09

Writing: 高田ともみ


どん、でん、どん。
9月下旬、秋の気配とともに地域に響きはじめる、太鼓の音。一年が祭りを起点に回っているといっても過言ではない、新居浜市民熱狂の三日間(10月16日〜18日、大生院地区は10月15日〜17日)が、またやってくる――。

四国三大祭りのひとつ、新居浜太鼓祭り。中でも近年、とくに注目を集めている行事、それが10月17日(木)に開催される「上部地区山根グラウンド統一寄せ(※以下、統一寄せ)」です。

地元っ子の私もこの行事については知らないことも多く、急きょ太鼓祭り推進委員会潜入取材を敢行。ド緊張の現場を後にして思ったことは、「やっぱり太鼓祭りって素晴らしい(涙)」ってことでした!

「上部地区山根グラウンド統一寄せ」とは?


▲10月に入ると街中がお祭りのポスター、チラシであふれる。

豊穣(ほうじょう)の秋、地域の氏神様へ感謝を伝える。古くは鎌倉時代にまでさかのぼるとも言われ(諸説あり)、歴史と伝統に裏打ちされたこの祭りの見どころは、やはり各所で競う「差し上げ」の美しさにあります。

差し上げとは、約3トンの太鼓台を150人〜200人のかき夫たちの力で持ち上げること。太鼓がきれいに持ち上がると、ふさや天幕は美しくゆれ、威勢のいいかき夫たちのかけ声は一層大きくなり、太鼓台はこのとき、一番の見せ場を迎えます。

「統一寄せも同じじゃないの」、と思ったあなた。違うんです。

この行事の中で最も熱気を生むのが、「寄せ太鼓」と呼ばれるもの。寄せ太鼓とは差し上げの一種で、何台もの太鼓台がぴったりとかき棒を合わせ、連なった状態で一気に差し上げる形のことを指します。

……っていま、サラーっと書きましたけど、1台約3トンの太鼓台を人力だけで持ち上げるのだって、当たり前にできることじゃないですよ。そこへ、複数の太鼓台が寄せ合い、かけ声とタイミングだけを頼りに一気に持ちあげるって、もうどういうこと? の世界です。


▲寄せ太鼓が始まったのは20年ほど前だそうで、地区を越えて協力しあうところも魅力。

わたし自身、実際にこの目で見たときの感動、今でも忘れられないんです。

あれは、二年前の市制施行八十周年記念「龍鼓祭」。過去最高数を狙おうと12の太鼓台が態勢を整えていました。やがて、中心軸となる2台へ向かって、両端から1台、また1台と太鼓台がにじり寄っていきます。

一度目は失敗。重さに表情をゆがめるかき夫たち。一緒になって声援を送る観客たち。まるで、山根グラウンド全体でこの祭りを祝福しているかのような一体感。

歓声のもと、12台が一気に持ち上がったとき、私は感動でしばらく言葉を失いました。初めて目にする光景であったにもかかわらず、祭りのあるべき美しさ、いやこれからの姿を見るようで、鳥肌がとまりませんでした。


▲龍鼓祭で過去最高の12台を記録。観客は固唾(かたず)をのんでその成功を見守った。

 

上部地区の「統一寄せ」を、世界に発信したい

「ぼくは、新居浜太鼓祭りのなかでも、この山根グラウンド統一寄せは、新居浜一、いや世界一の行事だと思っているんですよ」

そう言い切るのは、この上部地区山根グラウンド統一寄せ実行委員会の会長である、藤田隆生さん。上部地区をなすエリアのひとつ、角野地区太鼓台運営委員会会長でもあります。

最初は、自治会が近い4〜5台の太鼓同士が寄せ合うくらいだった寄せ太鼓が、龍鼓祭をきっかけに、多くの市民を惹きつける注目行事へと成長。ここに大きな契機を感じたのは、きっと藤田さんだけではなかったでしょう。

「山根グラウンドの統一寄せを見ずして、新居浜太鼓祭りを見たとはいえない。そのくらい、上部地区としてはこの行事に誇りをもって取り組んでいます。かき夫たちにとっても一番の見せ場。その意味では、太鼓祭りをもっと全国へ、なんなら世界へ、この上部地区から発信していけるものになると思っているんです」

▲話し始めると、めちゃくちゃ親切で優しかった藤田さん。お祭り男=怖い人と思い込んですみません。

そんな思いから立ち上がったのが、今回のチャレンジプログラム「上部地区山根グラウンド統一寄せ(新居浜太鼓祭り)太鼓祭り観光ツアー」。新居浜市の協力のもと、旅行会社の愛媛新聞旅行と提携。愛媛の主要な観光都市と「上部地区山根グラウンド統一寄せ」を結び、首都圏はじめとする観光客誘致を狙います。

観光資源として、太鼓祭りを盛り上げる。そこまでして、なぜ? そう思ったのは、きっと、私だけではないでしょう。

今回の企画の背景には、新居浜太鼓祭りが抱える、大きな課題がありました。

「祭りの継承」という課題に立ち向かう


▲マスコミも注目の「太鼓祭り推進委員会」。警察署が平和運行を呼びかけた。

藤田さんは、続けます。

「やはり、私たちが考えなければいけないのは、太鼓祭りの継承です。いま、圧倒的にかき夫が不足している。1台を運ぶのに少なくとも200人のかき夫が必要。今後どうやってその担い手を確保するか、われわれにとっても大きな課題です」

かき夫不足問題。それは、若者が減り、人口が減る新居浜市の課題とも重なります。どうすればかき夫を確保でき、太鼓祭り、ひいては新居浜市を盛り上げていけるのか。そのためにも、この祭りの存在を全国の人に知ってもらうことが大事だと、藤田さんは語ります。


▲太鼓台にとってもかき夫にとっても、差し上げは一番の見せ場。

「とにかく、全国の人に太鼓祭りに触れてもらって、ファンを作ること。今年はこうやってツアーを組んで観光客に来てもらう。もしかしたら将来、太鼓をかきにくるツアーなんかも企画できるかもしれない。上部地区としては、この統一寄せを活用して、新居浜市とも協議しながらできることで発信していきます」

未来をみすえ、上部地区太鼓台としてどう行動するか。「ぼくだって、いつまでも太鼓に関わっていけるわけじゃないけんね(笑)」。冗談まじりに笑う藤田さんの言葉に、切実な想いがこもります。

 

とにかく見て! 10月17日午後は、山根グラウンドへGO


▲毎年3万人超えの人出となる山根グラウンド。今年は8台の寄せ太鼓にチャレンジする。

最近は、あらっぽい喧嘩祭り(※太鼓どうしが鉢合わせ、けんかしたりする行為)ばかりが注目されることの多い新居浜太鼓祭り。わたしも若いころは、鉢合わせこそが、祭りの醍醐味だと思っていた時期、ありました。でも近年は目に余る暴走もあり、うーん……(無言)。

でも、祭りの本当の面白さは、やっぱりそこじゃないんです。地元っ子としても未来につなぎたいのは、そこじゃない。僭越(せんえつ)ながら、藤田さんの言葉の端々に同じ思いを感じ、取材後しばらく感動が止まりませんでした。

それぞれに祭りに対する思いが熱いだけに、いろいろと思う人もいることでしょう。
でもだからこそ、言いたい。一度、「山根グラウンド統一寄せ」を見てほしいです。
ここほど純粋に、新居浜太鼓祭りの魅力を味わえる場所は、もうほかにないかもしれないですから。

【今回の取材先】
チャレンジプログラム「上部地区山根グラウンド統一寄せ(新居浜太鼓祭り)観光ツアー

日時:10月17日(木)12:00〜16:30
(主なプログラム内容)
12:00 子供太鼓台入場
12:25 子供太鼓台演技
13:00 大人太鼓台入場
13:30 全太鼓台一斉差し上げ
13:50 地区別演技
15:30 四地区選出八台の寄せ太鼓(★ココが見せ場!)
16:00 一斉清掃
16:05 太鼓台退場
16:30 太鼓台退場完了

場所:山根グラウンド
お申込み方法:
クラブツーリズムの旅行ツアーへの申し込みが必要です(観覧席のみの確保はできません)。クラブツーリズムのホームページから「新居浜太鼓祭り」で検索してください。
お問い合わせ:
上部地区山根グランド統一寄せ実行委員会
0897-65-1261(新居浜市運輸観光課)